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毎日建築設計に携わっていると、大部分の労力は予算内に施工費を納めるとか法規に適合させるとか次世代省エネ基準をクリアする断熱性能を確保するとかそういう「あたりまえのこと」を「あたりまえのように実現させる」ために費やすことになる。
つい最近も、切妻屋根のけらばから雨がぴとぴと落ちないようにする納まり(下を通行する人にとってみれば、雨の雫が落ちてきて当たったりするとちょっと気分悪いだろうから)をメーカーの人とかと考えたりして。
「あたりまえ」と思われていることなので、できてあたりまえ、できなかったらやたら怒られるというなかなか厳しい世界だけど、「あたりまえ」っていうのはある意味ではフィクションみたいなもので、みんながあたりまえだと思っているだけで、実は全然あたりまえじゃなかったりするんじゃないか、と思ったりすることがたまにある。
で、こういうことを設計者が言うとかなり言い訳として聞こえるので普通は極力言わないようにするわけだけど、今日は(なぜか)ふと気になったし事実としては正しいと思うので敢えてここで書いてみる。
雨が漏れないって信じれるということは実はかなり普通じゃない事なんじゃないか。
防水の納め方なんてのは詳細図の参考書やら防水メーカーのカタログとかによく載っていたりしてみんな勉強していくわけだけど、この納め方でなんで雨が漏らないとういことになるのか、というところについてはかなり根拠が曖昧だ、ということにある日思い至って、いろいろと調べてみた。
それほど深く研究したわけではないけれど、ざっと調べた感じだと「参考となる標準仕様」の説明とか解説は山ほど出てきても「それで雨が漏らないことになる証明」みたいなものはどこにもない。
防水を一定の幅以上貼り重ねるとかドロドロにとかしたアスファルトを垂らして隙間をなくすとか、考え方の方向正としては共有できてもそれじゃあなぜ○○mmの重ね代なのか、とかそういった具体的な数量の決定の根拠がよくわからない。
「標準仕様書にあるから」とかいう回答は典型的な思考停止で、それは制度の説明であって根拠の回答じゃない(メーカーの営業さんにありがち)。
なぜ、押さえコンの目地はパラペットから600mm離して、かつ3000mm間隔で設けることになってるんだ?
だからこれは証明できない類の問題なんだと理解した。
言い換えれば、「今までこれでやって○○年間大丈夫だったから、これでやっておけばやっぱり○○年間は大丈夫でしょ」という、経験とか確率とか統計とかいった類の話だということだ。
でも、確率とか統計の話だということは、つまりどんなに低確率だろうと必ず例外があるわけで、必ず例外があるということは必ず漏る可能性があるわけですよ、そこには。ヘンな理屈をこねているように聞こえ始めてきましたが、この経験とか統計だとかいったことに対して人は非常に無防備に全幅の信頼を置いちゃうらしい。思考停止したい大人にとって格好の逃げ場所なんだろう。
ある建築学科の元教授兼小説家なんかは、「建築で新しいことをやったら新しい納まりになるのが当たり前なので従って雨が漏れて当然」とうような趣旨のことをどこかで言っていて、(と記憶していて、)さすがに実務で責任を負って設計している身としてはそこまで言い切るのもかなり憚られるけど、というか口が裂けてもそんなこと言わないし言えないけど、でも言わんとしていることは理解できちゃいましたね。。。