[建主様のご質問]では、建て主様からよくいただく家づくりに関する素朴な疑問について、ひとつひとつ答えていきます。もし家づくりに関する質問がありましたら、本記事下の欄にコメントいただくか、随時twitter(本サイト右下に私のtwitterタイムラインが表示されています。)またはメールにて受け付けておりますので、お気軽に話しかけてくださいませ。

 

Q.コンクリートの質感が好きで、コンクリート打ち放しにしたいのですが、何に気をつけたらいいですか?


※写真は竹を型枠に用いたコンクリートのテクスチャー。工夫次第で、布のように凹凸のあるザラザラした表面や、ガラスのようにツルツルの表面にすることもできます。

 

「コンクリート打ち放し」という仕上げの質感が好き、という方はたくさんいらっしゃると思います。ただし、一口に「コンクリート」といっても、いろいろな表面の仕上げ方があります。1)そもそもコンクリートというセメントと鉄筋の組み合わせからなるこの素材は、はじめは船をつくる材料であったとも、植木鉢をつくるための材料だったとも言われ、諸説あります。それが、20世紀初頭にパリではじめて建築作品の表現として柱梁に用いられ、以降モダニズム建築の主要な表現手法として使われてきました。今でも、少し古い市庁舎や公共建築に杉板型枠で打たれたコンクリート打ち放しの建物をよく見かけますが、明治以降に日本に輸入された表現です。関東大震災の際に、火災によって鉄骨の高層ビルが燃え落ちてしまったというトラウマから、構造体にはコンクリートを好むというコンクリート偏愛文化が日本に根付いたという説もあり、(こちらの記事)そういった歴史もあって、日本にはたくさんのコンクリートの建物が建っています。

  1. 「打ち放し型枠」のコンクリート・・・多くの方がイメージされる打ち放しコンクリートのイメージは、この「打ち放し型枠」を用いたものだと思います。直線のキレイな目地、規則正しく配置されたピーコンの穴、ツルツルした光沢のある平滑な表面。このような打ち放しのイメージは、安藤忠雄さんの作品によって定着したものであるとも言われています。本来、コンクリートとは、肌理の粗いザラザラしたブルータルな風合いの仕上げとして使われてきました。
  2. 「普通型枠」のコンクリート・・・仕上げ面に用いないことを前提にした普通のベニヤ板を型枠にして打ったコンクリート。肌理は粗く、型枠ごとに微妙に面がずれてデコボコする。あえて普通型枠のコンクリートを仕上げ面に用いて塗装を施すような仕上げにすることもあります。
  3. 「杉板型枠」のコンクリート・・・古い公共建築でよくみる、細長い木目のパターンがうつしとられたコンクリート。あまり流通しておらず一回使ったら捨てるしかないため、1、2に比べて単価がかなり高い。
  4. そのほか型枠をいろいろ工夫して打つコンクリート・・・冒頭の写真のように、竹やガラスや布など、いろいろな素材を型枠に試してみることで思いがけない質感を得ることができる。

 

さて、家づくりでコンクリート打ち放しを用いる際には、上記のようなイメージを固めていく楽しい作業がある一方で、リアルな選択を迫られもします。ポイントは大きく二つあって、

  1. コスト・・・・・坪単価で比較すると、一般に、木造<鉄骨造<コンクリート造 の順に高くなっていきます。東日本大震災やオリンピックに伴う建設事業数の増加によって、土木系の施設でもメインで使われるコンクリートの型枠職人が不足し、コンクリート造の建物の工事単価は高騰しています。予算と規模次第で、計画の早い段階でコンクリート造にする/しないを見極めることが大切です。
  2. 温熱環境・・・・コンクリートの打ち放し面を外観にあらわすか、室内側にあらわすかという選択は、得られる空間の温熱環境に大きな影響をおよぼします。一般に、断熱材をコンクリート外壁の外側に施工したほうが室内の温熱環境は快適な範囲で安定し、コンクリートの大きな熱容量を活かして冬の夜も温かい快適な家にすることができます。一方で内側に断熱を施工した場合でもしっかりと断熱してヒートブリッジ対策を行えばまずまずの温熱環境は確保でき、コンクリートの表面を街に対して見せることができます。このように、外観と温熱環境が相関関係にあります。

 

冒頭の写真のように、型枠の工夫次第でさまざまなテクスチャーを構造体の表面につくることが可能なので、もしコンクリート造を選択される場合には、いろいろと楽しんでみてはいかがでしょうか。


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1. そもそもコンクリートというセメントと鉄筋の組み合わせからなるこの素材は、はじめは船をつくる材料であったとも、植木鉢をつくるための材料だったとも言われ、諸説あります。それが、20世紀初頭にパリではじめて建築作品の表現として柱梁に用いられ、以降モダニズム建築の主要な表現手法として使われてきました。今でも、少し古い市庁舎や公共建築に杉板型枠で打たれたコンクリート打ち放しの建物をよく見かけますが、明治以降に日本に輸入された表現です。関東大震災の際に、火災によって鉄骨の高層ビルが燃え落ちてしまったというトラウマから、構造体にはコンクリートを好むというコンクリート偏愛文化が日本に根付いたという説もあり、(こちらの記事)そういった歴史もあって、日本にはたくさんのコンクリートの建物が建っています。