[建主様のご質問]では、建て主様からいただいた素朴な疑問について、ひとつひとつ答えていきます。もし建物づくりに関する質問がありましたら、メールにて受け付けています。
Q. 家づくりで建て主にできることは?
個人住宅に焦点をあてて22点リストアップしました。
- 一日の生活のタイムスケジュールを客観的に把握してみる
平日は朝晩しかいない、休日はアウトドア派、となるとリビングを充実させるよりも大きな眺めのいいお風呂が大切かな、という具合に、力を入れる部分と割り切る部分が整理して見えてくることもあります。
- 就寝前、朝の習慣など、現状の自分の行動パターンを把握してみる
朝は必ずシャワーを浴びる、夜のお風呂の時間は長い、帰宅後は即シャワーを浴びて着替える、等。収納をおくのににふさわしい場所や部屋の位置関係が、習慣的な動線を明確にすることで見えてくることもあります。ただし、習慣は必ずしもキープしなければいけないものでもないので、変えてもいい習慣、変えたくない習慣もあらためて整理しておくと設計プランのよしあしの判断に役立つでしょう。
- 間取りではなく、どう過ごしたいかを考えておく(関連記事)
植物に囲まれてくつろぎたい、星空を眺めて寝たい、朝日で目覚めたい、趣味の自転車を飾れるリビングにしたい、など。実現したいワクワクするイメージをもちましょう。間取りは建築家にそのイメージに合わせて提案してもらえばよいのです。住宅を規格化するために生まれた「LDK」システムをオーダーメイドの住宅に持ち込む必要はありません。
- 自分の家だけでなく、向こう三軒両隣まで見回してみる
土地選びから始める時は、もちろん隣近所は重要な検討材料。(関連記事)土地が決まっている場合も隣近所は自分の自由にはならないもの。かといって近所づきあいは否応なく発生します。周りを見渡せば、隣家に影を落とさない位置に建てる、など間取りに影響するような生活イメージが生まれてくることも。
- 5年後、10年後、20年後を想像してみる(関連記事)
ワークスタイルの変化、子供の成長、家族構成の変化など、現時点での将来の予測をたてると、子供部屋を将来作り足したり、なくしたり、駐車台数を増やしたりする必要性が見えてくることもあります。エアコンの位置やコンセントの位置などの細かな設定にも影響が出て出てきます。
- 物量は冷静に把握を(関連記事)
収納はあればあるだけ使ってしまいますが、収納面積が大きいことは工事費の増大に直結します。1畳増やすだけでも工事費が50万円程度増えます。まずは整理して優先順位をつけておき、間取りの中で無理のないバランスで収納を計画して、自分たちの生活スペースがモノに占有されて本末転倒にならないようにしましょう。持ち込む家具を採寸して設計プランの中に並べることで、プランの盲点に気づくこともあるため、地道ですがいい家づくりのために大切な作業です。
- 窓口をだれにするかを決めておく
建築家に伝える窓口が誰がはっきりさせておかないと、意見調整に時間がかかってしまい、それだけ時間が過ぎて行ってしまいます。意見をまとめるために家族会議をしっかり行っておくことが、のちのち良い結果に繋がることも。基本的には夫、キッチンに関する部分だけ妻、というようにしておくのもアリです。
- 予算オーバーを見越して、やりたいことの優先順位をつけておく
あれこれやりたいことを盛り込みすぎて、予算オーバーすることが家づくりではむしろ当たり前です。あらかじめ優先順位をつけておくことで後悔なく取捨選択できます。逆に、見積もりをみて慌てて要望を削ってしまったことにあとから後悔することも。
- 好きな空間だけでなく、嫌いな空間もイメージを掴んでおく
狭い玄関はモノがあふれかえって嫌だ、リビングを経由せずに子供部屋に行けてしまう生活はしたくない、など、避けたい空間イメージこそしっかり建築家に伝えておくと間違いない提案を引き出せます。
- オープンハウスに行ってみる
実物スケールで体験してみると、写真でみているだけでは感じないいろいろなアイディアや自分の好みを発見することができます。建築家に問い合わせれば、直近で参加可能なオープンハウスを紹介してくれます。参加に費用はかかりませんので、相談してみるとよいでしょう。
- 地盤調査を事前に行う
いざ着工となったタイミングで発覚しがちなのが、地盤にかかわる問題。地盤改良工事が追加で必要になったり、地中障害物の撤去が必要になったり。増えた費用を賄うために設計プランの変更を余儀なくされることも。地盤調査の費用は5万円〜25万円なので、設計開始時に早めに調査を行っておいたほうが安心です。土地購入の際にも、できれば地盤調査は行ってから購入を決定したいところ。
- 解体費用は意外にかかることを知っておく(関連記事)
解体費用は場合によっては百万円単位でかかることがあります。建物の大きさだけでなく、家の前の道路にショベルカーや車両が入りにくいことでも費用は上がります。早めに見積もりを取って予算に組み込んでおくと安心です。
- 補助金や減税制度について調べておく(関連記事)
ローンの所得税控除や補助金申請などさまざまな優遇措置があり、土地が属する自治体によってもさまざま。長期優良住宅、低炭素建築物認定、住宅性能評価書の取得によって得られるメリットもありまが、申請には時間も別途申請費用も必要になるため注意が必要です。また、長期優良住宅にするためには性能に悪影響のある仕様規定を受け入れなければならないケースもあるためメリットのあるなしは冷静に判断したいところです。
- 匂いや音、目に見えないものも想像する
雨の日の雨樋のたてる音、大きなワンルームのLDKでの食事のにおい、トイレの換気扇の音、寝室からの音漏れ。あらかじめ想像しておくことで、たとえば配管の位置を寝室から遠ざけるなど、間取りに影響する対処が必要になることもあります。
- マイナスポイントも質問しよう
吹き抜けは開放的だけれど冷暖房の工夫が必要(関連記事)、大きな窓は気持ちいいけれどプライバシーへの配慮が必要、など、マイナス面は意外に忘れられがちです。出来てから気づいた、とならないように、提案のマイナス面についても遠慮なく建築家に聞くようにしましょう。
- ペットの有無が床材を決める
猫や犬を飼うのであれば床材は掃除しやすいものが望ましく、無垢フローリングであってもウレタン塗装、ガラス塗料塗布などの方法が、土間コンクリートの場合も防塵塗料塗布などの方法があります。将来飼いたい気持ちがあるのであれば、それもあらかじめ建築家に伝えておくことが失敗しない床選びのコツです。
- 当たり前を外すときは今一度検討を
建築家の発想は、時にあって当たり前だと思われていることを外す提案をしてくることがあります。例えば、網戸をとったり、玄関がリビングと一体になったワンルームだったり。常識にとらわれない空間の提案は、もちろんうまくいくことが多いですが、たまに「こんなはずでは」ということもあります。じっくり考えましょう。
- 収納を考えるときは自分に期待しない
引き出しや扉付きのクローゼットなど、家具工事は費用もかかる部分ですが、扉の開け閉めが面倒な場合にはせっかくお金をかけて扉をつけても邪魔なだけ。逆に整理整頓が苦手で収納の中がごちゃごちゃしがちであれば、きれいに生活するためには収納の扉は必須かもしれません。帰宅してすぐ上着を脱ぎたいせっかちな性格ならば、上着用の収納はクローゼットではなく玄関収納にしまおう、など、無理が生じない収納配置にするために、ありのままの自分の性格を建築家に伝えましょう。
- 経年変化について質問しておこう(関連記事)
白い壁、木の表情が美しい柱。竣工当初は美しいものが経年変化でどうなるのかは、建築に質問しておきましょう。白い壁は鋼板や光触媒塗料塗布など、気の柱は保護塗料塗布など、対策もあります。
- 後でできることは潔く後回しにする
いま必要なもの、後から加えられるものの見極めが大切です。屋根材はひとまず安価にしておいて、毎日目に入るキッチンにお金をかけて、将来屋根材は吹きかえる、など、「いま全部やらなくてはいけない」と思うと予算的にも精神的にもキツくなってしまいます。家づくりに終わりはないので、次に楽しみをとっておくのも一興です。
- 耐震、防水、断熱を重視
家のスペックを決める要素は、1に構造(耐震)、2に防水(雨漏りしない)3に環境(断熱、換気、照明、遮音)です。後から変えられる内装に比べて骨格や外壁の内部は後から変更するのは費用もかかり難しいもの。最初は性能に関する部分に予算を割くようにすることが、長持ちするいい家のために大切なことです。
- 完成はない。余白をとっておくこと。
できてから、足りないもの、あったらいいものは絶対出てくるもの。むしろ、住み始めてから決めるスペース的な余白をとっておけたら良いでしょう。収納に関しても、入れるものが決まってから収納の形を決めることでぴったりの収納にすることも可能。住み始めてからでないとわからないことは保留にしておく勇気も大切です。
以上、いろいろな観点からの注意点をリストアップしました。あくまで参考としてとらえて、共感できた観点だけ取り入れてご自身の計画に活かしてくださいませ。
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